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「コンビニ人間」 村田沙耶香 著 2016年芥川賞受賞
前から気になっていたこの芥川賞受賞の小説が文庫化されたので、
読んでみた。世界24か国語に翻訳が決定とか。

世界中で読まれているということは、この本のテーマ
「普通であること」の苦悩が、普遍的で現代的な問題だということか。
長くはない小説なのであっという間に読めた。
そして、考えてしまった。

自分も含めて、世間の人はたいがい「普通」であることを求める。
しかしごく普通の人間にだって、普通とは言えない時期もある。
それに心の奥に秘めた「普通ではない自分」の存在については、
多くの人も 自覚しているだろう。

普通ということが 正しいということになってしまうのなら、
この本の主人公恵子も、十代後期の頃の私も、
かなり?の「異常者」か、発達障害者ということになる。

10代後半の自分を考えると、他者とのコンタクトの方法が
わからなかっただけかもしれない。
たまたまそれが 思春期の自意識過剰状態と重なった。

中年以降の自分の姿は、あの頃の自分とは全く違っている。
つながりを求めて、自ら与える人になっている。
こんなふうに「普通」でない時期があっても、なにかの契機で
「普通」になれるし、「普通」に暮らせるものなのだ。

普通にみえても、魂は自由奔放だから
普通でないことを妄想したりすることもあるが、
それは罪ではない。

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でも今は、時代が違うだろう。
誰もが身の内に深い意味不明のストレスを抱え、
それを発散、解消できずに 他者に負の感情をダイレクトにぶつける。
そしてすべての人に「仲間内」であることを 強要する。

そんな現代に生きる、発達障害気味の女性の物語が
多少ショッキングに この本には描かれている。
本のなかで主人公恵子は、どんなふうにすれば「普通」なのかと悩む。

どういうふうな受け答えを すればいいのだろう・・・
みんながぎょっとした顔で 不思議そうに自分を
見ないようにするためには。

それがわからない恵子は、コンビニのバイトを通じて、
先輩たちの完ぺきな受け答え、店内の商品の把握、接客の基本、
売り出し商品のディスプレイなど、あらゆることを学んでいく。
そして数年経ったとき、彼女はアルバイトながら完ぺきな
「コンビニ人間」となる。

ここでだけは彼女は充実し、必要とされ、よく労働し、役に立つ。
ここ以外では 命の輝きもなにもない。
そんな彼女の平穏な暮らしに よくサボるバイトの男が現れる。

恵子は怠け者の彼を、別に好きでもなかったが、中年になった自分に
「男」がいないのは普通?ではないと感じて同居を提案。
浪費家の自己中男は、次第に彼女に横暴になり、
自分の論理に従うように 強要する。

アルバイトでなく ちゃんと就職しろ。
お前の給料で 俺は食わせてもらう。
どうせお前なんか、普通じゃないんだ。
同居してもらえるだけで ありがたいと思え。
・・・もちろん、ふたりに感情の交流やセックスなどない。


ラスト、男に薦められて無理に就職試験を受けに行く途中で、
恵子はコンビニに 呼ばれた気がした。
ふらりと引き寄せられてしまう。
「私の完ぺきな世界が私を呼んでいる」きっとそう感じたのだ。

この世界のどこにも 普通でない人の生きる場所が他にないのなら、
自分が生きて充実する場所が そこに在るのなら、
ムラ社会の厄介者、「お前なんか人間じゃない!」と
罵倒する怠け者の男よりも 自分が全機能する場、
コンビニを選ぶのは 当然!

普通の女も 普通でない女も バカな男の言いなりに
なることなどない。
それにしても「普通」であることを求める世間の圧力は、
日々加速しているのかもしれない。
人間を潰してしまうほどの とてつもない圧力・・・

普通の人は、普通でないことに傷つく人を敏感に察し、
深い理解と共感を示して 共に生きていくパワーを
持つべきだと思う。

普通でなくても いい。
自分らしく のびのびと自由に生きられるのなら。
普通でないことを排除しない生き方を 私は選びたい。

どんなときでも 私は日本型のムラ社会の「普通」に
縛られるのは嫌だ。
自分だって、普通でなくなる時がそう遠くない未来に 
やってくるかもしれない・・・

「普通」なんて、はかないものなのだ。
by yuko8739 | 2018-12-15 21:29 | 読書 | Trackback | Comments(0)