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ゆうゆうタイム

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2019年 05月 14日 ( 1 )

アウシュヴィッツのゾンダーコマンド(特殊任務)

私は以前に、映画「サウルの息子」をみて衝撃を受けた。

主人公の視点で動くキャメラが 異常な強制収容所のリアルな

現実を見事に表現していて圧倒された。


この映画は 第二次世界大戦中のアウシュヴィッツ=

ビルケナウ強制収容所を舞台に、ゾンダーコマンド(特殊任務)の

囚人であるハンガリー人サウルに起きる1日半の出来事を描いている。


2015年カンヌ映画祭のグランプリのほか、アカデミー賞外国語映画賞など 

世界中で数々の賞に輝いた。


この映画をみて以来、強制収容所での「特殊任務」の

当事者が書いた本を読んでみたいと思い、ようやく先日読み終えた。


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「~私はガス室の『特殊任務』をしていた~

知られざるアウシュビッツの悪夢」

証言したのは、ギリシャ生まれのイタリア系ユダヤ人、

シュロモ・ヴェネツィアさん。

彼はこの体験を長く語ることができず、開放から47年後に

やっと話し始めた。


「証言するのは恐ろしい犠牲を伴うからです。

一時も離れない、刺すような苦しみを再び甦らせることなのです」

シュロモさんは 生涯この体験に苦しみ続けた。

しかし、再びユダヤ人排斥運動が浮上してきたことなどを契機に、

自分のおぞましい体験を 語るようになった。


この本を読み始めることに 私自身躊躇がなかったとはいえない。

知らないままでいいとは思わないが、真実を知ることには

恐怖感もあった。

しかしこのことは、実際に起きたこと。

映画をみただけで 知ったような気になってはいけない。

私は、毎晩読み進めた、シュロモさんと同行した。


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なぜ人間はこうも残酷になれるのか。

人が苦しみ死んでゆくことを おもしろがって見物したり、

より苦しむように より痛むように 仕向けたりする。

なぜ?なぜそうできるのか?

生きている人間が 生きている人間に対して なぜ?


ユダヤ人だけではない。

反政府主義者、ソ連軍捕虜、共産主義者、精神病患者、

障がい者、ジプシーなど。

ナチスは あらゆる人々を徹底的に大量に殺戮した。


毎日貨車から降りてくる多くの人々・・・

絶望のまなざしで並ぶ痩せこけた人々、その衣類を脱がせ

ガス室に送る。

苦しみの叫び声が消えてから 床に横たわる遺体を運ぶ。


脱いだ服から金目の物を探し、遺体から髪の毛を切り、

金歯を外し、ガス室を空にして掃除し、

それから遺体を焼却場に運び、遺灰を川に捨てる。


こういう仕事は、強制収容されてきたユダヤ人のなかから

体格のいい若者で構成され、ゾンダーコマンドと呼ばれた。

シュロモさんは20歳のそんな若者だった。


次々と効率よく仕事をこなさなければ 遺体が滞る。

それがゾンダーコマンドの仕事。

はじめは食欲も失せ、呆然自失だったシュロモさんは 

すぐに「適応」してゆく。

考えては 動けなくなる。

考えずに作業に没頭した。


仕事ができなければ すさまじい暴力を受け、

自分もガス室に送られる・・・

横たわる遺体にも 慣れる。

何も感じない自分に なる。

衣類を脱げず、ぐずぐずしている老女には いらだつ。

早く、早く、次のガス室送りが待っているぞ!


この特殊任務には 強制収容所の人たちよりは

食べ物も多く支給された。

しかし外部に秘密が漏れないために、定期的に抹殺された。

 

読みながら 何度か泣いた。

今もこう書いていて 涙がこみ上げる。


過去の出来事だが このことは多くの人が知るべきだと思う。

この本は、2005年アウシュビッツ解放60周年を機に、

フランスで出版されるやいなや 読者の間で大きな感動を

呼びおこしてベストセラーになった。

世界十五か国以上で翻訳されている話題の本。


人は これほどのことができるのか。

地獄は天になく 地上にあった。

修羅の場、死の悪魔、すべてがこの世の人の世界にあったのか。

神は 人類を見捨てたと思う。

ヨーロッパ全体では ホロコーストの犠牲者は600万人。

強制収容所では 150万人が犠牲となった。


シュロモさんは、最後にこう語る。

「すべてがうまくいっているのに、突然、絶望的になる。

少しでも喜びを感じると、すぐに私のなかで何かが拒絶反応を起こす。

私は『生き残り病』と言っています。


チフスとか結核とか、人が一般にかかる病気じゃない。

人の内面を蝕み、喜びの感情を破壊する病気です。

私はそれを収容所で苦しかったときから引きずっています。

この病気は、私に一瞬たりとも喜びや気苦労のない瞬間を

与えてくれません。


この極限の経験で奪われたものは、人生です。

うまくいくとは思ったことがなかったし、

他の人のように、ダンスに行ったり、無心に楽しむこともなかった・・・

すべてが収容所に結びつきます。


何をしても、何をみても、心が必ず同じ場所に戻るのです。

あそこで強いられた<仕事>が頭から出ていくことが決してない・・・

焼却棟からは永遠に出られないのです。


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シュロモさんが 自分の経験を語り始めたのが70歳。

本が出版されたときは 80歳になっていた。

収容所での話を 多くの人に伝えることを使命として、

アウシュビッツにも 研究者や学生と共に50回近く訪れている。

そして2010年に、パリで亡くなった。

88歳だった。


この無残なホロコーストを正確に記憶し 

わが身を削るようにしながらも 誠実に公平に証言し続けた。

ゾンダーコマンドという仕事が この世に存在したことを

広く世界に知らせてくれた。


言葉にできないことを証言し、教えてくれてありがとう。

人類史上二度と このようなことを起こさないために

シュロモさんの意思を 深く胸に刻みたい。


合掌・・・




by yuko8739 | 2019-05-14 22:27 | 読書 | Trackback | Comments(0)