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映画「サウルの息子」をみて

2015年制作のハンガリー映画。第二次世界大戦中のアウシュヴィッツ=
ビルケナウ強制収容所で、ゾンダーコマンドの囚人であるハンガリー人の
男サウルに起きる一日半の出来事を描く。
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(以下wikより一部引用)
ゾンダーコマンドとは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが
強制収容所内の囚人によって組織した労務部隊である。
主な仕事はガス室などで殺されたユダヤ人の死体処理だった。

外部への情報漏えい防止のため、ゾンダーコマンドの囚人は
3か月から1年以内ごとに ガス室に送られて殺された。

40代のネメシュ・ラースロー監督は、この「ゾンダーコマンド」に関する
本(ゾンダーコマンド隊員の証言を収録した本:「灰の下からの声」
「アウシュヴィッツの巻物」としても知られる) を見つけ、本作の着想を得た。

共同脚本家ロワイエとネメシュ監督は 調査に数年を費やし、
その中で歴史学者から助言を得て2010年より脚本の執筆をはじめ、
2011年に初稿が完成した。

2015年、第68回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で初上映、
グランプリを受賞。第88回アカデミー賞では外国語映画賞、
第73回ゴールデングローブ賞でもハンガリー映画としては
初となる外国語映画賞を受賞。
その後も世界中の映画祭で数えきれないほどの賞を獲得。

「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」など
強制収容所を描いた作品は 世界中で製作されているが、
他のどんな映画とも 全く違う作品だった。

独自の撮影方法と語り口で 説明を一切廃した焦点の合わない画像と、
主人公サウルの顔のクローズアップだけが 延々と続く。
正方形の画面に戸惑っているうちに、いつしかサウルに自分が重なっていく。
他にはない独自性と個性を持つ映像が、世界中で絶賛されている。


最初は、とまどうばかり。
情況が よくわからない。
カメラの焦点が合わず、なにが起こっているのか見えない。
そのうちに、この収容所で シャワーを浴びるためと
裸でガス室に送られ、殺されるユダヤ人の死体処理や
片づけをしているのが サウルの仕事とわかってくる。

ここでも床に転がっている死体には カメラは焦点が合わない。
ただ、焦点が合うのは 主人公の顔のクローズアップのみ。
カメラは阿鼻叫喚のガス室周辺の様子も ピントが合わない。
ただ、労務者たちは機械のように 効率よく殺された人を片づける。

混乱のなか、手振れするカメラの動きに次第に自分が取り込まれていく。
そして観客は主人公と一体となる。
この地獄のなか 無言で無感覚にならなければ、生きていけない。
そのサウルがあるとき、ガス室で生き残った少年をみる。
すぐに医師は口をふさぎ、息をしていた少年を殺す。

その子の遺体を サウルは執拗に追う。
医師には、知っている子どもなので正しく埋葬してやりたいという。
しかし、その頃同僚たちは密かに武力蜂起の準備をしていた。

ガス室の殺戮が間に合わないほど 多くのユダヤ人が運ばれてくる。
穴の前で 次々とユダヤ人が銃殺される銃声が響く混乱のなかで、
ただ、サウルは少年の遺体を探し、自分の寝床に運び、
埋葬のためのラビ(宗教指導者)をさがす。

サウルはいう「息子を正しく埋葬してやりたいんだ」
同僚は言う「なにを言う、お前に子どもなんかいないだろう!」
ここでまた 私たちは混乱する。
サウルに こどもはいない?
誰だ?この子は?


無力蜂起に協力もせず、サウルは埋葬してくれるラビを
狂信的に探し続ける!どこにいる?息子を埋葬するラビは!

大量殺戮と武力蜂起の不穏な混乱状態でサウルは何度も
殺されそうになりながら、一心にラビをさがす。
他のことは何も考えない。

武力蜂起の最中で サウルたちは森に逃亡する。
サウルは 布に包んだ子どもの遺体を抱えながら 
ゾンダーコマンドの仲間と必死で森を駆け抜け 川を渡って逃亡する。
いつしか、サウルの腕から流れ落ちて 子どもの遺体は川に流されてしまう。

ラスト、隠れた小屋の入り口で 村の子どもの姿を見て 
はじめてサウルは笑う。
なぜ、サウルは笑ったのか・・・
そして最後は・・・


謎だらけの映画、意味不明、理解不能。
そう思う人も 多いだろう。

しかし、この地獄のなかで 親子の愛にすがりついて、
他の一切はかまわず そこだけで彼は「正気」を保ったか。
自分には 子どもはいないとしても。

自分もすぐ殺される身で ガス室の死体や
血液や糞尿などの汚物を掃除し 手足のない解剖遺体を
みて暮らすことに 人間が耐えられるわけはない。

人は、人でなくなるのは簡単だろう。
かなしいことに 人は慣れてゆく。
ただ、どこの子かわからないけれど サウルは息子と信じた。
自分を父と 信じたのだ・・・

息子には正しい埋葬を、そう願うのはあたりまえのこと。
それが異常な行為となるのは その場が狂った暴力と
死の蔓延する世界だから。


サウルの笑顔の意味は なんだろう。
混乱と究極の喪失のあとで 川に流れた少年が
生きて戻ったと 錯覚したのか・・・ 
監督はいう。
「観客に その解釈は任せたい」

以下、WIKより
The A.V. ClubのA・A・ダウドは映画に「A-」の評価を下し
「『サウルの息子』は強制収容所という生き地獄に
絶望だけでなく本当のドラマを見出す稀有なホロコースト・ドラマである」
「『サウルの息子』は労苦に人間性を、行動にアイデンティティを見る。
それは、数字に還元されてしまうような何も持たない男が、
主に無意味な悪の巣窟で何らかの意味を見出すことによって、
彼自身を取り戻す様を見つめる」と、映画の独創的な視点を讃えた。
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by yuko8739 | 2019-01-10 13:13 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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