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ゆうゆうタイム

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映画「ロングロングバケーション」をみて     

雪が降り、気温が下がり真冬日のような日に映画をみに行った。
認知症の夫と末期がんの妻の話。(シネマトーラス自主上映)
すてきな夫と妻は、人生の最期をこんなふうに過ごしたのか・・・

ヘミングウエイを熱愛する夫は元大学教授、
人格も気質もすばらしい男性。
社交的な妻は人や会話が好き、ユーモアたっぷりの前向きな女性。
とてもいいコンビネーションの夫婦だと思う。
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互いに深く愛し合い、どちらかが欠けた人生は考えられない。
大人になった子どもたちにはなにも言わずに、ふたりは旅に出る。
認知症と末期がんの夫婦だ。
子どもたちは慌てふためくが、親譲りの古いキャンピングカーに乗って。
ふたりは出ていく。(このキャンピングカーの名前が映画の原題)
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妻は夫が熱愛するヘミングウェイの住んだ家を目指して進む。
認知症の夫が なんとか車を運転する。
キャンプ場の夜、ふたりで子どもたちの幼かった頃のスライドを上映する。
懐かしい思い出にひたりお酒を飲む。
このスライドのなかの「過ぎた時間」こそは 夫婦のかけがえのない宝物。
映画「ロングロングバケーション」をみて     _c0204725_10371615.jpg

主役のD・サザーランドがいい味を出し、英国女優ヘレン・ミレンの
豊かな感情表現は名演だった。
ときに夫は粗相をしたり、最愛の妻を浮気相手と勘違いしたりする。
しかし人生の終わりにも ユーモアは救いの宝石のように散りばめられる。

一時の浮気をしても 夫が愛しているのは妻なのだし、
怒りにまかせて 妻は夫を施設に置き去りにするがすぐに連れ戻す。
旅ならではのできごとも 軽妙に描かれる。


懐かしいポップの名曲に乗せて 
ボストンからキーウエストまで アメリカの老夫婦は
キャンピングカーで南下したが・・・

だが、ラスト。
妻の決断には一瞬で現実が立ち上がり 我に返る思いがした。
私は自ら問い、問われる思いがした。

私だったら どうする?
それしかなかったのだろうか、他の選択は・・・
そんな問いが 消えずに残る・・・

互いなしには生きられない2人にとっては、
こうなるのが幸せだろう。
これが最高のラストシーンか・・・

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映画を見て 日本の老夫婦を考えてしまう。
日本は超高齢化の現実を これから迎えなくてはならない。
100歳を超えて元気な老人も増えているが、
だがしかし、すべてのことを手厚く介護されずには 
生きられない人もいる。

特に認知症は社会的には 一般化されつつあるが、
愛するがゆえの家族の苦悩も 深いだろう。

アメリカ人とは気質も全く違う。
日本の高齢の妻(80代以上?)の多くは
男尊女卑の国日本の稼ぎ頭の夫に従い、長い確執の暮しに耐え、
思いを口には出さず 溜めて生きている。
 
ユーモアが救いになるとは 到底思えない。
ユーモアには相手を思う「知性」が必要。
誰もが使える「技術」ではない。
シャイな日本人は 身体的なふれあいも なかなか難しい。

現実の日本の老夫婦の闇はより深く、
互いにより孤独であるように感じる。
決定的に日本人に欠けていると私が感じるのは 
会話の能力に乏しく、特に「相手の話を聴けない」ということ。

そのことを大切なこととも思わずに、聴く力を磨く努力をせずに
老いてしまうと、老夫婦は会話のない人生になる。
相手の快不快に 気づかないまま 理解もなく、通じ合わない
鈍感な夫婦になってしまう。

特に会話をせずに 自分の感情を妻にぶつけることしか
できない老いた男性は、みじめで孤独な最期になるに違いない。
 
そして自分の未来は どうなるのか。
最期の時には、何を選びたいだろう。

そして最期の時は 私は誰と過ごしたいだろう・・・
by yuko8739 | 2018-12-01 10:10 | 映画 | Trackback | Comments(0)