炊き出し2日目の台所では、「玉ねぎ足りないよ」「もっとむく?」
「ピラフにはバターでしょ!やっぱり買ってくる」
「鶏もも肉と味噌も 足りないよ!買ってきて!」
急いで買い足しに走ったり。
「早くご飯炊かなくちゃ」と焦ったり、お椀を40個揃えたり。
テンションが上がり、叫び、まるで戦場のようだ。
みな、時間に追われて興奮し 殺気立っているのがわかる。
予定の時間までに 料理が完成すると ほっと安堵する。
食事を作るのは町会館だが 食べる場所は水族館休憩所。
大量の料理を運搬しやすく分けて 車で運ぶ。
この場所が 調理の会館のすぐそばなので助かった。
2日目の昼の炊き出しは ホタテの稚貝を大量にもらったので稚貝の味噌汁と
親子どんぶり、もやしのナムル風にしたが、こういう味噌汁が初体験の
都会育ちのスタッフは ホタテのだしの味噌汁のおいしさに感動してお代わり続出。
この日 東京に帰る片岡さんが 食事のあとで美しいバイオリンを奏でてくれた。
なんと幸せな音楽のひとときに みな聞き惚れた。
お昼ご飯をケータリングしたあとで、
「エキストラが必要、数人程度バスの乗客になって!
顔は写らないから」と言われたので、5人で協力した。
バスに乗って15分くらいで終わるのかと思ったら。
なんと2時間以上!!!バスは動いたり 止まったり。
冬の設定なので どこからか雪を運んできて それを撒くスタッフ。
バスの外で子どもがからむシーンなので 監督が演技指導をして
繰り返し 撮りなおす。
こころのなかでは「早く会館に戻って 食器を洗いた~い!」
う~~~ん、役者にはなれないなあ。
辛抱が足りない私だったが、いい記念になるかも。
最終日は 朝9時から夜10時までとハードで 疲れもピークに。
昼のピラフとナムルを仕込む。
私は、不足の買い物でバタバタ。
前日の昼の炊き出しの際の待ち時間に 水族館の裏手の土手で
浅緑の美しいふきのとうが たくさん咲いているのを見つけた。
ふきのとうの差し入れもあった。
さっそくふきのとうを採り、夜帰宅してから差し入れ用の
お菓子フロランタンを焼き、蕗味噌を作った。
最終日の夕食炊き出しの際に 手製の蕗味噌を出したら
東京から来た撮影スタッフさんなどにも大好評。
「おいしい、これなに?」「ふきのとう?味噌?どうやって作るの?」
「また ご飯にのせて!」
「鯛味噌みたいに 旨いなあ」
そして 玉ねぎと人参、ふきのとうの葉のかき揚げは 春の香りで絶品!
これも足りなくなるくらいの人気だった。
エビやイカも入れない 野菜だけのかき揚げなのに
これだけ甘く、ふきのとうが香るのにはびっくり!驚きのおいしさだった。
夕食後に 主演の中島広稀さんの誕生日なので、お祝いケーキを用意して
みんなで 歌ってケーキのおすそ分けもいただいた。
主演俳優さんとは知らずに 彼にケーキも切り分けた私・・・
撮影終了の翌日、町会会館に洗い物や掃除に集まったのは 炊き出し班の5人。
台所はもちろん、廊下などもきれいにして 備品を整理して終ったのが11時前。
そのとき集まったメンバーと珈琲タイム。
ガラス張りの高級cafeで 香り高いコーヒーを愉しみながら
周囲360度の眺望に癒される。
仲間たちと今回の撮影や、今までの4年間をふり返った。
この映画を通して 自分のなかの「ふるさと愛」が深まったと 語り合った。
だから みな健気で一生懸命なのだ。
私は映画の仲間たちを 愛している・・・
この4年間は かけがえのない宝物・・・
映画の神さまへの恩返しだと思って ハードなことも続けてきたけれど、
もっとすごいものをこの活動から 私はもらっているのだなあ、きっと。