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「色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年」を読んで

やっぱり1日で読了した。

高校時代に、とても仲がよくて 気も合って ここが自分の
居場所と 心から思える完璧な調和の4人の仲間たち。
大学に入っても、帰省しては語り合い その仲間に属していることが
幸せだった主人公、田崎つくるは 突然その仲間から
理由もわからずに 完全に拒否され はじき出されてしまう。

どうしてか、わからない・・・暗い海に 投げ捨てられたよう。
帰る場所が なくなった。
理由を聞く気にもなれないほど つくるは混乱し、絶望する。
半年もの間、死ぬことだけを考えて 人格も身体も別のものに変わった。

それから 長い16年もの年月を経て つくるは仲間に会いにいく。
なぜ、自分は あのように扱われなければならなかったのか。
その理由を知るために。
そのことと 向かい合うために。

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本を読んでいて、自分にも似たようなことがあることを思い出した。
ごく親しい高校時代の友だち、中年になってからも時々会って、
親しく深く 会話した。

ある年の暮れから 一切のメールも手紙もなくなった。
なにがあったのか わからない。
答えのない問いばかりが繰り返される、どうして?どうした?
このままだと 苦しい。

私がなにかしたのなら、それを話して。
「あなたが傷つくと思うので それは言えない」
私は理由がわからないことに より深く傷つき 彼女から離れた。
考えても いまだにわからない。
いまだに終わらない 私の混乱と怒りを 思い出した。

互いに友だちの少なかった十代の頃から 深く本音で語り合う
友情を育んだつもりだったのに、あなたは私に
なぜ こんな仕打ちをしたのだろう、消えない傷・・・



田崎つくるさん、あなたは少なくとも その理由を知った。
私は いまだにこの魂の隙間に「どうして?」という痛みを残したまま。
あなたほど苦しみもしなかったし、他にも友達はいたけれど。

だから、主人公のやるせなさ、人を信じることの怖さが 
私にもわかる気がした。
とくに 理由がわからないということに対しての混乱が。

その後の人生を「色彩を持たない」自分として 生きる辛さが
身に沁みる。
こころの内側は 閉じてしまっている。
それだけ 怖くてたまらないのだ。

ひとり、親友と言えるほどの友だち、灰田とよい関係を築いたかに
思えたが、突然灰田は去ってしまう。
忽然と つくるの前から姿を消した。

人生の不条理を 作者はこのエピソードで描きたかっただろうか。
あんなにすばらしい友情を得たかに思えた瞬間に 友が去った。
理由も 何もかもわからないまま。
最後まで その謎は明かされない。


しかし、中年になった今、恋人の後押しによって、
十代に出会ったすばらしい仲間たち、自分の居場所を 
中年の今辿り歩く。
それこそが 彼の「巡礼」なのだ。

出会った3人と本音で話すことで つくるは癒されていく。
それぞれの友は つくるを失ってしまったことで もうあの5人の輝きは
帰ってこなかった、失ったと語る。
完全なバランスをとっていた5人は だれが欠けても元通りにはならない。

そして、つくるのなかでは だれもが傷つかずに生きていけなかった
という意味において 仲間は まだ仲間のままなのだ。
失われたかに思えた絆を 確かめる巡礼でもあった。
死と再生の物語。
この文章が 深く心に残った。

そのとき彼はようやくすべてを受け入れることができた。
魂のいちばん底の部分で田崎つくるは理解した。
人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。
それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。
痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。
悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、
痛切な喪失を通り抜けない受容はない。
それが真の調和の根底にあるものなのだ。

この言葉に 魂は深く打たれた。



by yuko8739 | 2017-05-26 12:10 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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