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ゆうゆうタイム

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北欧ミステリーの傑作「緑衣の女」

アイスランド発のミステリー「緑衣の女」作者はアーナルディル・インドリダン。
前作「湿地」も読んだが、悲しく壮絶な物語が印象的だった。

この作品もCWAゴールドダガー賞(イギリスのミステリー賞)と、
ガラスの鍵賞(北欧のミステリー賞)W受賞。

一気にこの物語に引きずりこまれる冒頭の描写がいい。
~床に座った子どもがしゃぶっているものを見て、
若者はすぐにそれが人間の骨だと思った。~

アイスランドの作家インドリダソンは大ベストセラー作家で、
同じくガラスの鍵賞受賞作「湿地」(東京創元社)で
日本でデヴューし絶賛された。

レイキャベク警察犯罪捜査官エーレンデュルシリーズの2冊目の登場。
このシリーズ三作目の「声」も 今年7月に発売された。

読み進めていくと、このミステリーの複雑な構造に驚かされる。
エーレンデュル警部が捜査をしたり、家族と係る現実の世界。
過去、ひとつの家庭の身がすくむような すさまじい家庭内暴力(DV)、
そして 警部自身の埋められない、過去のこころの傷。

それぞれの3つの物語が、深く心を打つ物語となっている。
陰鬱なアイスランドの冬、そこに暮らす人々のかなしみを、
余すところなく 描いている。

北欧ミステリというより 作者の重厚で文学的な文章のせいで
人間の性やどうしようもない人間のかなしみや美しさが より深く印象に残った。

そういう文章だから 謎が解かれたときには 深い感動と共感、
そしてアイスランドという国の歴史の断片さえも 立ち上がり、
深い感慨を感じさせてくれる。


それにしても、暴力というものが どれほど人間を破戒するのか、 
精神的にどれほど深い傷が 癒されないままに放置されるのか。
そのことが、作者が最も訴えたいことだったと思う。

強いものが 弱者をいたぶる世界の現実に 
作者は毅然として NOと言いたいのだ。

訳者の柳沢由実子氏の翻訳も格調高くて すばらしかった。
彼女は彼の著作の 信じられないくらいのDV描写に耐えきれず、
作者に会って 話を聞いたという。

「私は暴力を憎む。
人間のなす行為のなかで最も忌まわしいものだと思う。
作者は犠牲者の女性に代わって、知り得た真実を書き切らなければならない。
どれほど残酷なことかを描いて、けっしてしてはならないと訴えるのです。」

作者は静かな、しかし情熱を込めた口調で語った。

次作の「声」が文庫化されたら すぐに買おうと思っている。

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by yuko8739 | 2016-11-30 09:05 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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