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映画「怒り」

18日に 映画「怒り」を見て来た。
期待していたが 期待以上の傑作、感動作だった。
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監督の李相日(り・さんいる)は 国民的傑作映画「フラガール」のときから 
私はずっとその仕事に 注目してきた。
人間を見つめる目が 優しかった、生きることのかなしみの繊細な表現。
生きて愛することの本質を 描ける人だと感じた。


まだ、40代初めだが、この人間観察のすごさには感嘆する。
この深い洞察と、映画という表現媒体に向かう誠実に胸を打たれる。
すごいとしか いいようがない。
原作は「悪人」に続いて ふたたび吉田修一の「怒り」
脚本は 李監督が書いた。

東京で 夫婦が自宅で惨殺された。
現場には「怒」という血文字。
そして、事件から1年後の夏。

房総の港町で暮す父と娘、大手企業に勤めるゲイの男、
沖縄の離島で母と暮らす娘。
 そこに現れた身元不詳の3人の男・・・

三つの物語によって紡がれるのは、親と子、男と女、友情、愛と死、
激烈に魂を奪われる物語だった。
そこに通底するのは 残忍な殺人事件の犯人は だれかということ。
その不安と恐怖、そして祈りを 映画は見事に並列して描いていく。

全ての役者が 見事だった。
渡辺謙、妻夫木聡、森山未來、宮崎あおい、綾野剛、松山ケンイチ、
広瀬すず、私が強い印象を受けたのは 妻夫木聡と宮崎あおいの演技。
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渾身の演技というよりも その町でその人がこう生きている、
そんな臨場感がすごい。役者とは 脚本の人物を このように
まるで魔法のように 生き切ることができるのだろうか。

リアルということに 李監督は全精力をかけたのだろう、3年間をかけて。
この映画を通して問われるのは「信じる」ということ。 
私の「信じる」は どこに?
あなたの「信じる」は ここ?

その信じるという行為に もしかしたら殺人犯では・・・?その疑惑が重なってゆく。
なんと見事なstoryだろう。
吉田修一の原作に惹かれ、ちょうど映画をみた日に
注文していた本上下が届き、読み進めている。

映画と原作というのは おもしろい関係だと思う。
映画より 原作が抜群におもしろいというのもある。「指輪物語」
両方それぞれが すごくおもしろかったのは「羊たちの沈黙」

李監督は 吉田修一の描く原作と出会うことによって、
創作意欲が刺激され、究極の映画表現を目指そうと 覚悟したと思う。
原作者 吉田修一も本を書き進めながら 早い段階で李監督による映画化を
イメージしていたらしい。
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なんと幸福な 作家と映画監督の出会いだろうか。
吉田修一の原作における「人間の魂の本質を真摯に見つめる物語」と
李監督の「人間の根源的な感情をリアルに表現する映画スタイル」が
奇跡のように ひとつの作品に結晶した。

最後になるにつれて 心臓の鼓動が早鐘を打ち続ける。
犯人は誰?彼なのか・・・それとも?
そういう震えるようなサスペンスのなかで 人間の愛と憎悪が
終章に向かって 炸裂する。

犯人を特定しないために詳しくは語らないが この映画は
この10年の日本映画のなかでも 最高傑作ではないか。

坂本竜一の音楽も すばらしかった。
彼の音楽もまた 深い映画世界を投影して胸に刻まれる 
美しい旋律だった。

この映画と出会えたことに 感謝したい・・・
by yuko8739 | 2016-09-20 12:18 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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