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ゆうゆうタイム

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「暮しの手帖」という奇跡

大橋鎭子さんをモデルにしたNHKの朝ドラを、私は毎日興味深く観ている。
若い頃の私にとって 暮しの手帳は大きなものを与えてくれる存在だった。 

若いころに結婚して 数年経った頃に 私は何も知らない自分にとって
必要なことを学ぶような気持ちで 暮しの手帳を定期購読していた。
(その頃は、本屋さんが配達してくれた) 

毎月、この本が届くと まず表紙の美しさを味わう。
料理ページの次には、大好きなエッセイ「すてきなあなたに」を読む。

静かな優しい語りくちで 暮らしの些細な美しさや役立つヒントを
夜空の星のように散りばめた繊細なエッセイに 魅了された。

子育てで疲れ切った自分の肩を 優しく抱いてもらえるような気がした。
暮しの手帳は、数年間読み続け、美しく丁寧に暮すということの意味を、
私はこの雑誌から学んだ。

花森安治さんの徹底した妥協のない姿勢が 感じられた商品テスト。
あくまで消費者の視点、使い勝手を 重要視した。
それは挑戦だった、日本で初めての。
広告のない雑誌は 少しの偏りもなく公明正大だった。

暮しを豊かにするためには彩りや配置、良い手仕事を見抜く目が
必要だということを、私は知った。
~豊かですてきな暮らしのためには 一流の手仕事を味わいなさい~
そんな言葉が この雑誌から聞こえてくるようだった。

料理は 帝国ホテルや吉兆の名人、家具は飛騨産業。
その頃の私には 全く手が届かなかった美しく優雅で高級な
椅子やテーブル。

この椅子に座ったら どんな感じなのだろう。
家具というものに 憧れを感じたのは初めてだった。

本棚にこの本が増えて 私は自分のなかに「暮らしの手帳」的なものが、
充分に満ちたと感じたときに 定期購読をやめた。
ときどき 興味深いテーマが載れば その都度買い求めた。

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今でも 私は洗面所には 明るい色のハンドタオルをかける。
これも「すてきなあなたに」の アドバイスだ。
ナスの麻婆豆腐風は、この本のレシピ。
今も、暮しの手帳のエッセンスは 私のなかで「実り」となっている。

自分には厳しくても 人には優しく。
面倒くさいことは やる価値がある。
美しく暮すことの意味。

ささやかなことで 日常を潤す。
平和は声を上げ 意思を表明して得られるもの。
与えられるものに満足して黙しては 戦争がやってくる。

人として こんなふうに生きられたら 暮らしは美しく幸せに。
そんなことを 深いところから 学ぶことができた。


これはすべて花森安治と大橋鎭子というふたりの人間が出会って
はじまり、生まれたこと。
戦後の混乱のなかで それは見事なひとつの「奇跡」だったと思う。

どんなに酷いことだったろう、戦争は。
暮らしや人間を大事に生きていけば 戦争への道は閉ざされる。
花森安治が 自分のすべてをこの雑誌に捧げたことを、
その果実を、日本人全ての幸いだと感じる。


そして、鎭子さん。
あなたが あの「すてきなあなたに」の筆者でしたか・・・
「すてきな私」になるために、あなたのエッセイはどんなに
役に立ったことでしょう。

おふたりは亡くなりましたが、「暮しの手帳」なる精神は、 
多くの日本人のなかで 私のなかで 永遠に不滅です。

愛と感謝をこめて、
ありがとうございました。
by yuko8739 | 2016-07-18 10:29 | 読書 | Trackback | Comments(0)