「君たちはどう生きるか」

~「君たちはどう生きるか」 吉野源三郎 著 ~
読書好きな方々のブログで よくこの本の名を耳にする。
この本を10代の私に手渡してくれた大人は 残念ながらいなかった。
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シニアの今になって 私はこの本を手に取り、読み終えた。
この本を 若い頃に読みたかったとやっぱり思う。
そうすれば 人生が変わっていただろうか・・・
 
中学生が主人公だが、今読んでも 深く強く胸に響く。
なぜなら なにより平易な言葉だけが持つ率直さで 
中学生に語りかけているその内容が なんとすばらしいことか!
(何度か私は涙がこぼれた)

哲学や論理などの 難しい専門言葉を使わなくても 
こんなふうに 今生きている時間のなかで 
自分に起きるさまざまなことの意味を探り、
そのことが象徴する真実を 明らかにできるのだ。
これは すごいことだと思う。 

中流家庭(中の上)の小柄な中学生、コぺル君(あだ名)が主人公。
おじさんとは 父を早く亡くしたコペル君の母親の弟で、
いわば 作者、吉野源三郎自身が投影された人物。

~このあだ名の由来は「コペルニクス的転回」(カントの言葉)から。
物事の見方が180度変わってしまう事を比喩した言葉~

学校では 裕福な友人もいれば 家業を手伝いうために、
学校を休む友達もいる。
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貧富の差は厳然たる事実として存在しても、社会の仕組みを理解し、
友人たちとは、互いに自由で平等で豊かな人間関係を結ぶことが大事だと
コペル君のおじさんは、教えてくれる。

そして どんな人間が生きていくのにも 人の手がかかっているものに
支えられて生きている。
消費するだけの人間にくらべて 生産する人々の働きは尊い。
消費と生産という社会の原理を コペル君は学ぶ。

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コペル君は 自分の考えや経験を自分の言葉でおじさんに話す。
コペル君の体験や考えを聞いて おじさんは深い英知に基づいて、
自由と平等という社会的な視点から できことの本質的な意味を語ってくれる。  

つまり子どもにも 大人にも本質的で普遍的な「人間のあるべき姿」と、
「社会のあるべき形」を 教えてくれる。
それは時代や社会がどんなに変わろうと 戦争が起きようとも、
変わることのない、変わってはならない真実だと思う。

人間は弱いもの。
この本の後半には コペル君にとって最大の苦しみが綴られる。
第6章「雪の日の出来事」
友人たちとの、ある事件。
繰り返し自分に向けた無言の言葉は「卑怯者」!
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取り返しのつかないことをしてしまった激しい後悔で、
自分なんか、死んでしまえとコペル君は思う。
そして、重い病気になり半月も床に臥せる。
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ついに おじさんはコペル君の思いを聞く。
「今の君の気持ちを伝えるんだ、勇気をもって。
謝るんだ。そのあとのことはどうなるかわからない。
友だちを失うかもしれない。
でも、どうなるかわからないことを気にするよりも 
とにかく謝るんだ」

そして 母の言葉。
「後悔も損にはならない。
その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心にしみとおるように
して知れば、その経験は無駄じゃあないんです。
それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした、
深みのあるものになるんです。
だからどんなときにも、自分に絶望したりしてはいけないんですよ。
人間が知ってくれない場合でも、神さまは、ちゃんと見ていて下さるでしょう」

叔父さんは・・・
「人間である限り、過ちはだれにだってある。
そして、良心がしびれてしまわない以上、過ちを犯したという意識は、
僕たちに苦しい思いをなめさせずにはいない。
しかし・・・正しい道に従って歩いてゆく力があるから、
こんな苦しみもなめるのだ」(意訳)

「僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。
だから誤りを犯すこともある。
しかし
僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。
だから、誤りから立ち直ることも出来るのだ。」

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些細な日常のできごとのなかにも 多くの学びは存在する。
そのことを 自分自身の魂で考え抜くこと。
そしてどんなことも 自分のことは 自分が決めて
自分で行動できることのすばらしさ。

自分が人と 歴史と 世界とつながっている実感!
コペル君が 庭の水仙の芽に感じたのは
「そうだ!あんな深いところからでも、こいつはのびて来ずには
いられなかったんだ」

春に向かう季節のなかで あらゆる自然のなかに、のびて来ずには
いられなかったものが いっせいに動き出している・・・
そして、延びてゆかずにいられないものは、コペル君のからだの
中にも動いているのだった・・・


最後に彼はこう書く。
「僕は、すべての人がお互いによい友だちであるような、
そういう世の中が来なければいけないと思います。
人類は今まで進歩してきたのですから、きっと今にそういう世の中に
行きつくだろうと思います。
そして僕は、それに役立つような人間になりたいと思います」

そして私も、自身に問う。
私は、どう生きるのか?

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著者、吉野源三郎
~編集者・児童文学者・評論家・翻訳家・反戦運動家・ジャーナリスト。
昭和を代表する進歩的知識人。『君たちはどう生きるか』の著者として、
また雑誌『世界』初代編集長としても知られている。
岩波少年文庫の創設にも尽力した~
(この本は挿絵もなんてすてきだろう!)

この本には 著者の追悼の意味で書かれた
『君たちはどう生きるか」をめぐる回想』(丸山真男)が付載。
終生深い親交があったらしい彼の文章も しみじみとよかった・・・

初版の発行は1937年、79年前だ。
日中戦争の発端となる盧溝橋事件が 勃発する直前という時期に
出版された。

言論統制が進み、国家総動員法の制定に向かうような時期に
書かれた本とは思えない、この新しさ!
読みつがれてきた珠玉の名作だ。

戦争中は 一時発禁となった。

by yuko8739 | 2016-02-20 10:54 | 読書 | Trackback(1) | Comments(0)  

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Tracked from 読書と足跡 at 2017-11-18 08:30
タイトル : 君たちはどう生きるのか  著者 吉野源三郎
君たちはどう生きるのか 著者 吉野源三郎 新たな知識を求めてこの本と出逢う。 人は原子である、コペル君の言葉である。 さて、さてなんのことでしょうと思います。 これは、名書を漫画化した本です。 何故か流行っているらしいのです。 本屋には山積みです。 何故でしょうか? 何かが火をつけたのでしょう。 自分に正直になることが大切でし、なによりも言葉にすることが大切です。 ...... more

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