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ゆうゆうタイム

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弧族の国

朝日新聞 新年のシリーズ取材「弧族の国」が大きな反響をよんで 
第一部を終えた。
私もシリーズの初回から 深い興味を持って 読み続けてきた。

家族の機能が失われ この日本という国が みなひとりひとりの
「弧族」の国になっている現実を、さまざまな角度から照射する
意欲的に継続する 特集取材だ。

第一部では 今 最も「弧族」の傾向が強く現れている「男たち」の現実をルポした。
老親の介護を、老年となった男たちが背負う。
非婚の中高年男性の孤独と 自身の老後を若い他国の女性に託したい結婚願望も取り上げていた。

その苦しさと孤独。
親の介護のために 仕事を辞めた男たちにとっては、この不況社会の高い失業率の壁に
はばまれて、再就職は難しく。

生きていくためには、しかたなく死んだ親を放置しても 
遺体に手を合わせながら 親の年金で生きていくしかない現実があった・・・

そして、果てしない介護の辛さに 
「1日に何度も 母親を殺してやろうと思う」と 老いた男たちは泣く。
それなのに「助けて!」と言えないのだ、男たちは。



私は、思う。
一昔前の家庭が持っていた その機能の豊かさを、すばらしさを。

病気の親を介護しながら 子を育て 辛い家事をこなし 夫の世話に 
地域やPTAの仕事、時には 親戚の介護までも担ってきた家庭の女たち・・・

歯を食いしばっても 寝る時間がなくても 女がその全てを担っていた。
職業を持つこともなく 高い教育を受けることもないままに。

母は強し、女は強しというけれど、強くならなければ
どうやって生きてこられただろうか・・・

家庭の豊かな機能や地域の一体感は ほとんど女たちが黙々と背負い続けてきたのだ、
一昔前までは・・・
つまり女たちの犠牲的な献身が 今までは家庭のほとんどの機能の根源なのだ。

しかし 時代は変わる。
やっと女たちは自意識に目覚め 家を出て行くようになった。
教育を受け、職業を持ち 自己実現に向かって羽ばたき始めた。

家庭の豊かさを保っていたエネルギーは 外に向かうことになった。
このことを 家庭の崩壊というには あたらない。

女性力がベクトルを外に移し始めたとき、男性たちは家庭力をわが身に
つけなければ ならなかったのだ。
それが バランスというものだろう。

家庭と社会の活動を どちらも疎かにせずに 担うこと。
男も女も そのような生き方をすべきだった。
社会もそのような形に 変容すべきだったのだ。

しかし、社会は男が動かしているので 働き方は変わらない。
今までの男の働き方を 女たちにも強要する企業も 未だに多いのではないか。



職場をなくした中高年の男たちが増え、非婚の男性たちも増えた。
介護の必要な親も増えた。
しかし そこに女たちはいない。

建前に生き、本音を隠して生きてきた 誇り高い男たちは 
今 助けてといえずに 困難な状況を 孤独に生きている・・・

この国の「弧族」の深い闇のなかから これからどんな生き方が
見えてくるのだろうか・・・

しっかりと眼をみはって このシリーズ取材を見つめていきたい。

闇のなかにさす ひとすじの光を 探したい・・・


<現在 朝日新聞「弧族の国」第二部 家族代行 掲載中> 
by yuko8739 | 2011-01-26 13:10 | 社会 | Trackback | Comments(0)