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ゆうゆうタイム

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愛と憎しみの名のもとに

このところ、朝日新聞朝刊の連載小説「七夜物語」(作 川上弘美)が 佳境に差し掛かっている。
私は この小説に夢中で、毎日、まず朝刊をめくって この小説の続きを読むことが 
とても楽しみな習慣になっている。

ひとりの女の子が主人公。
母子で暮らす。
学校のことや 父のことも綴られる・・・

あることから 不思議な異界に行った女の子は そこで さまざまな体験をする。

そして 今 彼女は 異界で 「イキモノ」の世界から「モノ」を連れてきて、
「イキモノ」のようにしてしまう ウバと戦っているのだ・・・
ものごとを 正さなくてはならない。
イキモノとモノとの境界線がぼやけてしまうと 世界は狂う。

9月22日の小説に こんな言葉があった。



「どうしておまえの気持ちは、そんなにもころころと変わるのですか」

「だから、おまえたちイキモノは、だめなのです。
静かな心というものを決して持てない、おまえたちイキモノよ。
おまえたちは自分以外のものに対して、どうして心がはやってしまうのですか。

どうしてわたくしたちのように、モノたちのように、平らかな心でもって自分以外の
イキモノに向かえないのですか。

相手を憎んでやっつけるか、あるいは相手を愛していつくしむか。
おまえたちはいつもそんなふうです。

憎むのも、愛するのも、わたくしたちから見れば、同じ穴のむじな。
おまえたちはいつだって、憎しみや愛の名のもとに、相手を支配したがるばかり


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ウバのその問いに、私が 答えたくなった。
「どうして?」
それは 私たち人間というイキモノは 心を持っているから・・・

その心は 愛を求めたり 憎しみにあふれたり 支配する快楽さえも知っている。
心は どんな感情をも内包する、たとえ自覚がなくても。
意識の多くは 潜在している・・・

たとえていうなら 私のこのからだには
私の知らない ひとつの宇宙が 存在しているようなもの・・・

だから、すべてのできごとや すべての感情は この果てしない宇宙のなかで、
神のように現れたり 地獄のありさまをみせたりする。

イキモノとは そういうこと。
生きているとは こういうこと・・・


それでも心の宇宙を 平らかに 静かにしようと、
思うことも 多い。
心をはやらせないようにしたいと じっと大波の過ぎるのを
待つことも ある。
でも ときどき 悲しいことに 心は制御不能・・・で。


長く生きると 憎しみや愛の名のもとに 相手を支配することを 
望まなくなった、私の場合は。
だって 自分がそうされたくないのだから 人にそれをしてはいけない。

人や自分にも 多くを望まなければ イキモノは 平安で 
平らかでいられるのかもしれない・・・

ウバよ、それでも あなたのこの問いが 私に 突き刺さった。
おまえたちはいつだって、憎しみや愛の名のもとに、相手を支配したがるばかり

そして、必死に あなたに答えようとした私・・・

「イキモノには、人間には、こころがあるから・・・」と。 
by yuko8739 | 2010-10-01 08:42 | | Trackback | Comments(0)