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本質の人

井上ひさし氏が 亡くなった。
昨年秋から 肺がんで療養中だったとのこと。
とても残念で たまらない・・・

ついこの間も 彼の本を2冊読んだばかりだった。
「太宰治に聞く」
「宮澤賢治に聞く」

この両方の本の冒頭に あの世から 本人が現れ 井上ひさしと対話する。

その現れ方、話し方、ちょっとした会話やしぐさの癖、首を傾げたり・・・
そして その会話の いかにも さもありなんという人物描写と深さ、ユーモア。
これこそ 井上ひさしの真骨頂だと 思う。

つまり 井上ひさしは 「本質に迫り 本質をつかみ それを言葉で表現した人」
私には そう思える。
ユーモアという宝石で きらきらと外側を飾っても、 
その奥にある とらえどころのない真実を 言葉という魔法で 捕まえる人。

とてつもなく 膨大な蔵書の数々。
日本語への愛。憲法九条への愛。


彼の傑作「吉里吉里人」のおもしろさは 人間のおもしろさ、日本語のおもしろさ。
荒唐無稽な形をしているが 権力と制度、国家と人間 自由と権利、義務ということまで
深く体験できるのが、この本の本質だろうと思う。

つまり滑稽な寓話の奥に秘められた 真実というものの匂いを
感じるか どうかが この本のおもしろさなのだ。 
今も私の本棚にある この分厚い本は 確かに「おもしろくて やめられなかった」・・・

「四十一番目の少年」は 彼の原点の悲しさとおかしさが 語られている。
初期のみずみずしい青春の書「青葉茂れる」も 良かった。


4月13日の朝日新聞では 社説と天声人語の両方で 彼の死を悼み、
多くの著名人が 追悼の文を寄せていた・・・

「築いた言葉の宇宙に喝采」と社説。
「生涯かけて築いたのは、広大なる言葉の宇宙。そこにきらめく星座は、
人々を楽しませくれる。そして旅する時の目当てにもなる」


「遥かなその背中を、もうしばし追わせてほしかった」と天声人語。

~難しいことをやさしく やさしいことを深く 深いことを愉快に 
愉快なことをまじめに~と彼の座右の銘を紹介した 阿刀田高さん


そして・・・「平和と憲法を守る 民主主義の希望の星」と五木寛之さん。

人間は「あらかじめその内側に、苦しみをそなえて生れ落ちる」だが、笑いは違う。
笑いは「ひとが自分の手で自分の外側でつくり出して」いかなければならない。
「もともとないものをつくる」のだから「たいへん」なのだ、と。
~井上ひさし晩年の音楽劇「ロマンス」より   扇田昭彦さん~

もう 彼の本を読むことができないのは 悲しい。
ご冥福を こころから 祈ります・・・
by yuko8739 | 2010-04-15 21:59 | 読書 | Trackback(1) | Comments(1)
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Tracked from 粋な提案 at 2010-04-20 18:30
タイトル : 吉里吉里人 井上 ひさし
一農村が日本から独立を宣言。 日本政府の妨害に対処して目的を達成するには。 人達が繰り出す奇想天外な対抗策とその行く末は。 先日亡くなられた井上 ひさしさん。ユーモアと反骨精神が印象的です。 散り...... more
Commented by 藍色 at 2010-04-20 18:33 x
こんにちは。同じ本の感想記事を
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