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ゆうゆうタイム

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マンデラ氏の「不屈」

インビクタス   
 私を覆う漆黒の闇
 鉄格子にひそむ奈落の闇
 私は あらゆる神に感謝する
 我が魂が 征服されぬことを

 無惨な状況においてさえ
 私は ひるみも叫びもしなかった
 運命に打ちのめされ 血を流しても
 決して屈服しない

 激しい怒りと涙の彼方に
 恐ろしい死が浮かび上がる
 だが 長きにわたる 脅しを受けてなお
 私は何ひとつ 恐れはしない

 門が いかに狭かろうと
 いかなる罰に苦しめられようと
 我が運命を決めるのは 我なり
 我が魂を制するのは 我なり


(ウィリアム・アーネスト・ヘンリー著)
<INVICTUS インビクタスとは 不屈、不敗を意味するラテン語>

マンデラ氏の「不屈」_c0204725_1663679.jpg

2月5日 イーストウッド監督の新作を 公開初日に観た。
1994年 南アフリカ大統領に就任したマンデラ大統領の
人種差別を超えて「ひとつの国」を目指す熱い思いと、
その思いに応えるラグビーチームの主将との絆。

誰も知らなかった実話を 感動的に描いている。

スポーツが苦手な私でも クライマックスの決勝シーンでは
手に汗を握った。胸の鼓動が どんどん高鳴る・・・
スポーツという形でしか なし遂げられないことがあるのだ、
この場合は まさにそういうことだった・・・





しかし これはスポーツの映画ではない。
イーストウッド監督は こう語っている。
「指導者が目標を達するために、どれだけ想像力豊かになれるかを描いた」と。

「『グラン・トリノ』は、年をとっても学ぶことはあるというメッセージ。
『ミリオンダラー・ベイビー』も本当はボクシングじゃなく、父娘の愛の話。」と言う。
(2月5日 朝日新聞 夕刊より抜粋)


イーストウッドのこの言葉に 私は最高の知性を感じる。
彼は物語の本質を 鋭く正しく キャッチできる人。
そして それを 格調高く 静かな美しいタッチで 正確にフィルムに定着できる人。
決して 彼は 声高に叫ばない、それが 私の好みだ。

私がこの映画を観て 最も胸打たれたのは 冒頭の詩。
人権活動家として人種差別撤廃運動をしていたマンデラ氏は、
政治犯として27年間もの永い間、ロベン島の刑務所に収容されていた。

独房の孤独と苦しみのなかで 彼が胸に抱き続け 支えとしたのが、 
英国の詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩、冒頭の「インビクタス」だ。
高らかに 胸に響く鐘の音のような 意思に満ちた感動的な詩・・・
マンデラ氏の27年は この言葉と共にあったのだ・・・

マンデラ氏は 確かに 類まれな豊かな想像力を持っていたが、それだけではない。
胸に描いた自分の夢を信じる 強い意思を持っていた。
そして 何よりも 憎しみから開放されるためには かっては敵だった人間をも
赦す強さと 信じる勇気が必要なのだと 彼はわかっていた・・・ 

最後に特記したいのは モーガン・フリーマンのすばらしさ。
マンデラ氏は 以前から「映画化するなら自分の役は 彼に演じて欲しい」と願い、
モーガン自身も そのことを熱望していたそうだ。
ふたりは友人同士らしい。

そして この映画の製作者でもあるモーガン・フリーマンが、
イーストウッドに 監督を依頼した。

今まで モーガン・フリーマンが演じてきた 数々の名演を 私は思う。
「ドライビング・ミス・デイジー」
「ショーシャンクの空に」
「ミリオンダラー・ベィビー」(イーストウッド監督作品では 私のNO1!)
この3作品は 甲乙つけがたい 忘れられない彼の名作。

「インビクタス」にも共通する モーガン・フリーマンの役の特性は・・・
豊かな知性と感性、そして 誠実な人間の美しさ、希望を失わない強さ。
真実を まっすぐに見つめる心。

マンデラ氏を演じた あなたの大輪の花のような笑顔の なんという美しさ・・・
しみじみとした 佳作です・・・

マンデラ氏の「不屈」_c0204725_1673732.jpg


 
by yuko8739 | 2010-02-07 14:07 | 映画 | Trackback | Comments(0)