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ゆうゆうタイム

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村上春樹の世界

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読了。
この本は、村上春樹の1985年度の作品。
著者としては初めての書き下ろし長編小説、第21回谷崎潤一郎賞を受賞

この「世界の終わり~」と、「海辺のカフカ」は 水脈が通じていると
いわれるが・・・
近未来の情報戦争?のなかに わけもわからず飲み込まれ 
自分が知らないうちに 天才博士の措置によって 
人生を激変させられる青年の 苦悩と冒険を描く。

そして もうひとつのお話は「世界の終わり」で展開される、
静かで不思議な生活を描いている。
話は交互に進む。
どちらもきっと この物語には必要欠くべからざる ふたつの世界。
このふたつの世界が そのつながりの意味を見出すのは中盤以降のこと。

作者の描く近未来は 企業や政府の謀略と暴力に満ちた情報世界。
映画「ブレードランナー」の退廃と闇の匂いを感じる。
いっぽう、静かな図書館で 一角獣の頭骨から「夢読み」をする青年も
「こころ」を失い、感情のない世界に違和感を持ち始める。

このふたつの世界は どこで融合するのか。
ふたつの世界を統合する「自己」を実現できるのか・・・

なんともいえないラストシーンに、かなりショックを受けたが
今は、読み終えて時間が経ったので、世界の終りではじまる、
森での暮らしを おぼろげにイメージしたりする。

彼の本を読んでいると、物語を読む醍醐味を感じる。
どうしてこれほど 不思議な物語がリアルなのだろう・・・

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「少年カフカ」読書中
今、彼の本を読みながらも アマゾンで入手した古本
「少年カフカ」がおもしろくて 並行して読んでいる。
村上春樹の世界_c0204725_18155247.jpg


「海辺のカフカ」に寄せられた 読者からの1220通あまりのメールに
村上春樹が 答えている。
作者は 手を抜くということがない。
どんな質問にも あくまでも誠実に丁寧に答えている。

そして、くすりと笑ってしまうユーモア。
泣きたくなるくらいの、物書きの真剣さ。
作者と読者が 個性豊かに人生を語り つながる。

なかなかすてきな本だが、1220通ものファンからの
メールへの返事には どれほどの情熱と時間が
必要だったことだろう、驚きに値する。

「自分にとって 一番大切なのは読者。
だから 手間暇は惜しまない」
そんな村上春樹の思いが 伝わる本だ。

この本の表紙に(海辺のカフカにも)使われている、
猫の置物。なんともいえないふんいきがあり とてもすてき!
作者の個人的な持ちものとか。(私はこの置物が欲しい)
因みに村上春樹は 猫好き。
村上春樹の世界_c0204725_18162098.jpg

例えば こんな彼の言葉に こころがトクンとなるのだ。
「僕は基本的に人生は孤独なものだと考えています。
でもそれと同時に、孤独さというチャンネルを通して、
他者とコミュニケートできるはずだと信じています。
僕が小説を書く意味はそのへんにあると考えます」

「でもね、僕は53歳ですが、15歳の少年の話を書くのって
実はそんなに難しくないんです。というのは僕のなかにはまだ
15歳のときの僕がちゃんと生きているからです。
佐伯さんのなかに15歳の少女が生きていたと同じように。
そういうのってほんとに素敵なことなんです。」

私も 実にそう思います。
by yuko8739 | 2017-07-23 00:51 | 読書 | Trackback | Comments(0)